「竹林の拡大」の捉え方を少し変えてみる
竹林の里山林への拡大現象を山の中で目の当たりにした5−6年前、
「竹は地下茎を通してどんどん森林へ入っていって、
これは森林も呑まれていってえらいことだな(実際そんなことありませんけれど)。
でも、生態研究は思ったほど進んでいない」
と思いこの世界の研究に関わるようになったわけですが、
関わり続けるにあたって「竹林の拡大」への感じ方がだんだん変わってきました。
そこで、最近感じていることを1つ走り書きしておこうとおもいます。
それは、日本の歴史を振り返ってみると、
実は過去にも何度か「竹林の拡大」があったと思うようになったということです。
以下で書くように、現在は「竹林の拡大3.0」といえる段階と捉えることもできそうです。
いかに各時代の人間様の都合によって、
竹様の置かれる立場はコロコロ変わってきたかが分かってもらえるかと思います。
*ここで私は「竹林の拡大」=「竹林の面積が増えること」として捉えています。
私なりに各時期における竹林の拡大をざっくりまとめてみると、
【竹林の拡大 1.0:室町期〜】
マダケ・ハチク林の造成
千利休や豊臣秀吉の時代に生活資材や水防林目的で竹林の造成した時期。
【竹林の拡大 2.0:江戸後期〜】
モウソウチク林の造成
主に食用タケノコ用として熱狂的なモウソウチクの造成の時期。
【竹林の拡大 3.0:昭和後期〜】
モウソウチクの管理放棄に伴う野生化
都市化に伴い竹林は伐採され消失しがちだが、各地の山麓では、数世代前の人が大事にしていたものがいらなくなったので、ほったらかされた。タケが本来の性質を出して生育し出した。
ポイントは、
いずれの「竹林の拡大」も人間が大きく関わっているという点で共通していますが、
最新の「竹林の拡大3.0」では、人間が必要としなくなったことが原因という点がこれまでとは全く異なるということです。
拡大2.0までは、
人間様の都合で竹が各地で増やされ好かれ者になったわけですが、
拡大3.0では、
人間様の都合でほったらかしにされて嫌われ者になっているようだということです。
同じ対象物の面積が拡大しただけなのですが、時代によってこれほどにも逆を言われるとは、竹の気持ちになってみればなんとも変な感じですよね。
「竹林の拡大=悪」 と短絡的な考えに陥りやすく、
これはわかりやすいのでついつい報道したり教育しやすいものですが、
以上のような歴史を踏まえると、そういった教育は的外れなものであって、
イケてないのじゃないかなーと分かってもらえるのかなと思っています。
むしろ、「なぜ、今ここで竹が汚らしくおるの?」という問いかけから、
日本における竹と人の関係性について教育していく方が
イケてると思うに至っています。
おわりに。
各段階でどの程度拡大していたかというデータが欲しい
という声もありそうですので、
地域を絞って(たぶん京都ならできるし、一部なら論文がでている。
そもそもこの話、地域を絞らないと成立しないと思いますし)、
集められればと思っています。
また、現在、竹林の生態を理解しようと試みたいという自分のモチベーションは
まさにこの「竹林の拡大3.0」に生きるからならではのものですので、
ラッキーだと思うに至りました。
そして、「竹林の拡大4.0」は??
あるのか、ないのか分かりませんが、そんな時代もやってくるのかもしれません。