竹の世界

一昔前までは「生活必需品」だった竹。しかし今は各地で蔓延り、嫌われ者になった竹。このブログは、竹好きの若造による、竹の世界の再発見記。

竹と水インフラ:江戸期の遺物(上水道施設)の見学を終えて

私たちは今、蛇口を捻れば水が出てくる中で生きています。朝起きて顔を洗う、歯を磨く、風呂を入れるなどなど。

寒いのに暖かい水がすぐに出てこないと怒ったりしてしまうほど、贅沢な環境下で暮らしています。

しかし、私たちの数百年前?まではこんな環境はなかったでしょう。

今回、滋賀県のとある遺跡で発掘された上水道施設(竹管!)を見学する機会があり、そんなことをふと思わされたのでした。

 

きっかけは、2018年8月21日の中日新聞(滋賀版)「大津百町を支えた水道管」を読んだことでした。

当時はまだ発掘されたものが薬剤処理にかけられていて見られなかったのですが、その工程が終わったとのことで許可を取って見せていただくことになりました。

 

今回の水道管が発掘された場所は滋賀県大津市で、

東海道沿いに建ち並んでいた町屋の背後から、上水を供給していた施設だそうです。

上水道施設の基本構造は、竹菅(私が見る限りマダケという竹で直径7cmほど)と、継ぎ手(私が見る限り松)による接続からなります。

保存状態が良かったので、敷設に際しての基本構造を把握することができるという点で貴重な資料が得られたとのことでした。

 

詳しくは、こちらをどうぞ↓

調査員オススメの逸品 第221回 江戸時代の水道職人 ‐大津廃寺跡の上水道施設‐ | 公益財団法人滋賀県文化財保護協会

 

なぜ状態良く残ったのかというと、ちょうどその場所が地下水に触れる場所だったようで、長期にわたり水に浸かって分解が進まなかったからだそうです。

 

 

ちなみに私が実物を見せてもらって感じたことは、

竹の節が見事に抜かれている! どんな技術があったのか?です。

なぜなんでしょうか、詳しく調べていないので分かりませんでした。。

鉄パイプが十分にない時代、水を引くためには、

木・石・竹が用いられていたのでしょう。

それらの素材を駆使し、生きていくための術を持った人たちが多くいたのだと思います。

 

 

さて、竹が用いられた導水施設について気になったので少し調べてみました。

重松義則博士の仕事の一部から、竹が上水道や下水道インフラとして使われていたという記載を抜き出してくると、以下の4つが出てきました。

 

⑴ 784年(延暦3年):

都を長岡京に営む、その京趾から昭和44年マダケの排水管が発掘された
(上田:竹と人生p140)by 竹No.16 日本竹林業歴史年表

→ 洛西竹林公園にこれに関する展示がある

 

⑵ 1394年(応永1年):

室町・戦国時代にて籠城中など地下深所の水を吸上げる方法として竹管を長く接ないで(接目は灰油、木蝋で固める)地下水層に達せしめ地表の管口辺で焚火して吸引した。 by 竹No.16 日本竹林業歴史年表

 

⑶ 1679 年(延宝7年):

長崎市街に竹水道管(モウソウチク)が倉田次郎佐衛門によって布設された(明治37年発掘・国際文化会館所蔵)  by 竹No.16 日本竹林業歴史年表

→ 色々と突っ込みたくなる。ほんま!?

 

⑷ 1868年(明治1年):

函館戦争があった五稜郭の築城と徳川時代布設した江戸神田方面の上水道には竹管が用いられた。 (茂庭博士:竹の研究)by 竹No.18 日本竹林業歴史年表第2集補遺編
 

 

他にも、ググれば出てきます。例えば、9世紀に高野山高野町 | 高野山の水道)で使われていたそうです。他にも、発掘調査の報告書をあたるといいかもしれませんが、竹の種類までは同定されていないでしょう。。

研究でいえば、 近江八幡水道の研究があります。「○○水道」って地理の授業かなんかで昔聞いた覚えがありますが、導水には竹が使われていた場所もあったのでしょう。

 

このまとめサイトも面白いです。

www.mizu.gr.jp

 

海外(フィリピン)でも使われているのですね。現在はどうなのでしょうか?

竹の水道管で水を飲む、「適正技術」を考える - ganas 開発メディア

 

 

最後になりますが、

今回、上水道施設が発掘された場所は、NHK放送の建物になるそうです。

私としては、新しく作られる建物の中に、「江戸時代の水管の痕跡」があったことを思い出させる仕掛けが欲しいなと感じました。竹のことも。

 

 

今回の見学を終え、今の贅沢な水インフラの生活に慣れてしまうと、時には不便もあっただろう当時の水インフラに戻りたくないと正直思いました。

でも、現代に使える部分や取り入れられる部分って、何かあるのじゃないかなーと思った次第です。